千葉地方裁判所 昭和33年(行)3号 判決 1958年5月31日
千葉県山武郡横芝町六三一番地
原告
合資会社 丸二商店
右代表者代表社員
内田源太郎
同県東金市東金
被告
東金税務署長 田中信男
右指定代理人
真鍋薫
久保田衛
簑輪恵一
加瀬準之助
加藤隆一
河合昭吾
右当事者間の昭和三十三年(行)第三号所得税査定金額に対する決定取消請求事件について当裁判所は次の通り判決する。
主文
本件はいずれもこれを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告が本件準備手続期日に出頭しないので陳述したものと看做した訴状によると、原告は「昭和二九年一一月三〇日に東金税務署が原告に対して納付税額を金八三、二九〇円とした決定を取消すと共に現に原告の資産を差し押え中のものはこれを解除する。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として、原告は肩書地で乾物雑貨小売商を営んでいたものであるが営業不振のため昭和三〇年一二月頃から休業した。ところが東金税務署長は昭和二九年一一月三〇日原告に対し、納付税額を金八三、二九〇円とする旨の決定をなし、その旨通知があつた。原告はこれを不服として口頭で再三にわたり審査の請求をし、又書面を以てもこれを請求したに拘らず被告はこれに対して何等の調査もないのであるが、右課税処分は、事実に基かない過大な課税であつて違法なものである。しかして又被告は昭和二七年一一月一一日原告所有の不動産を差押え現に競売手続が進行中であるが、これは不当な課税処分に基くものであるから違法である。よつて、これ等処分の取消を求めるため本訴に及んだと述べた。被告指定代理人は、本案前の答弁として本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、その事由として、原告は、被告が昭和二九年一一月三〇日原告に対してなした昭和二八年度分の法人税についての決定処分の取消、及び、昭和二七年一〇月一一日なした、原告会社代表社員たる個人内田源太郎所有の不動産に対する差押処分の取消をそれぞれ求めるもののようであるが、原告は右各処分について何等再調査の請求をなしていないから、訴願前置の要件を欠き、本訴は不適法であると述べた。
理由
原告の本件訴は、請求の趣旨、原因ともに明確を欠くが結局全体の趣旨から被告がなした法人税額の決定並びに国税徴収法に基く滞納処分としてなした差押処分の取消を求めると云うにあるが、前者については法人税法第三四条、第三五条により、後者については国税徴収法第三一条の二、三によりそれぞれ再調査の請求、審査の請求をすることが出来、前記各処分の取消を求める訴は、法人税法第三七条第一項、国税徴収法第三一条の四第一項により右審査の決定を経た後でなければ、これを提起することが出来ない。
しかして、原告は、右課税決定に対して、書面を以て審査の請求をしたと主張しているが本件準備手続期日及び口頭弁論期日に一回も出頭せずこの点につき何等立証せず原告が書面を以て再調査の請求及び審査の請求を為した事実は認めることが出来ないから、本訴は訴願前置を欠く不適法なものと云わざるを得ない。
よつて本案について判断するまでもなく本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 内田初太郎 裁判官 山崎宏八 裁判官 桜林三郎)